終わりよければ全てよし

ちょっとだけ文章を書くのが好きなオタクのポエム張です。

隣の隣の隣の部屋の友達

おそらく彼は僕の友達だった。

隣の隣の隣の部屋に住む彼のことを知ったのは小学校に上がってからだ。私は公園デビューをしておらず、そもそも友達がひとりもいなかったのでそこに同い年の男の子が住んでいることを知らなかった。

彼は私と同学年の同じクラスの男の子だった。
彼との記憶で一番強烈なのは、やはり仮面ライダーごっこの時のことである。当時やっていた龍騎の女性ライダーに夢中だった私は男の子たちに混ざってその役をやっていた。あまり相手にはしてもらえなかったが、13人目のライダーとしてその場にいるだけで嬉しかった。
すると彼は一番弱いであろう私に目を付けたのか、私の体を持ち上げて何回も落とした。持ち上げては落とした。わざわざ。私はこの時自分の体が思い通りにならない暴力のあり方を知った。同い年の子からそういう風に扱われたのは初めてだった。
周りの男の子も止めてはくれていたのだが収まらず、計10回は落とされたと思う。やがて授業の終わりになってしまったため、私は先に保健室へ行った。お尻には痣ができており湿布を張って少し休まされた。
恐怖で泣くかと思えば(泣いたのかな?)、むしろ遊んでいて怪我をさせられるという初めての体験に私は少し喜んでいた。孤独とは悲しいものだ。




彼はその後少し気まずそうにしていたが、前述のこともあり、また男の子の遊びに混ざれば怪我もあることは覚悟していたためさっくりと許した。それがまずかったのかもしれない。
彼は帰り道、私をストーカーするようになった。私は彼と特別親しかったわけではない。そして帰り道はいつも孤独にひとりだった。
そんな私でも、いくらなんでも家と家の間の細道までついてくればこれは追われているなと気づく。そしてやっと彼の家が隣の隣の隣であることに気づいた。なんという。

悪い子ではないのだろう。しかし怪我をさせられた時のように、彼はカッとなってしまうと制止がかけられないところがあった。会話の中でもそれはそうだった。めんどくさいなと思い、避けるも(元々私自身がぼっちであったためいじめにはならない)毎日必ず彼はついてくる。

二週間くらいのうちは我慢するも、ついに「ついてこないで!」と言ってしまうが「ついってってねーし」と言う。だがわざわざ通らないような道に変えてもついてくるのに無理があった。

そうしているうちに、彼が家の前で座り込んでいることがあることに気づいた。彼が鍵を持っていない時にお母さんが働きにでていることがあったのだ。
そういう時は、どうせならと家に招いて遊ぶことになった。ちなみに私が初めて家に招いた友人は彼になる。まあ話したことも遊んだことも親しくもなんともなかった彼を友人にカウントするならばだが。

ジェンガとかをやっていた気がする。
そうしているうちに、彼のカーッとなってしまう気性はよくあることなのだと気づいた。私の母と話していてもそれはあった。
つまり彼もまた私と同じように、周りのお友達と遊んだことがなかったのだ。
ただそのお互いどのようにしていいのかわからないという戸惑いが彼の気性を抑えたのか、そこそこなごやかに・・・?過ごすことはできた。

そして彼の気性は彼のお母さんやご家族からの由来なのだろうなということもなんとなくわかってきた。


私は彼に少しシンパシーを感じていた気がする。
そして彼もそれを感じ取っていたのではないかと思う。
変わった家に生まれてしまったという、自分で自分を好きになれない感じ。私を怪我させてしまった後、暴言を吐いてしまった後の自己嫌悪する彼の様は人の中にある矛盾そのもののようだった。


やがて私は引っ越すことになり。
学校に行って思ったのは、彼にそれを伝えようということだった。
おそらく彼はもう私の友人になっていた。友達かはわからないけど。

「なんで言わないんだよ!」
「や、だから今言ったよ」

なんてことを言った気がする。友達みたいだ。

彼の名前が少し変わっていた理由をそれから十何年くらい経ってやっと知り、わずかな納得こそあれど、私にとって彼は彼だった。もう名前も覚えていないけど。彼は私にとってそういう人、であったままであり、たぶん友達だったのだろう。

今彼が元気で暮らしてくれていればいいと思う。