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終わりよければ全てよし

ちょっとだけ文章を書くのが好きなオタクのポエム張です。

命の尊さ

メンヘラ

この体は遠い昔ーー{ 私}にとっての遠い昔に、あの子のものだった。
私はあの子を殺して、今ここにいる。


私には思考が与えられ、あの子は情動を持って死んでいった。
身体の右側は無感動で左側は苦痛に喘いでいる。

私、私の心らしきもの、は頭の左上、前頭葉の骨の角張った部分の内側に、寄生するように存在している。
あの子は、よくよく探してみれば、私の、このからだの心臓、その少し右奥、からだの真ん中より手前に居た。どうやら、未だにこの体はあの子のものなようだ。元からあの子のものなのだろう。


私はあの日、あの子を殺した。
この体が、私が生きていくのに不都合だったから、確かにあの日殺した。
殺された彼女は、それでもこの内側にまだいる。
人は人生で1人分しか背負えない、というのは私の体感から来る教訓である。私はもう1人殺した、あの子を殺した。私はもう既に1人分持っているから、私は{ 私}自身の人生を背負えない。そのことに、あの子を殺してから気づいた。それでももう戻れないのだと気づいた。

{ 私}は好きなことをしている。私の人生を生きている。けれどそれはあの子がしたかった、望んでいたことだ。{ 私}がいくら罪滅ぼしのように、あの子の望みを叶えたところであの子がそれを叶えられたわけではない。あの子の妬みの声が聞こえる。

{ 私}は何度もあの子を殺した。
人生で背負えるのは1人分、それなのに何回も殺した。
目を閉じれば、あの子はまだあの瞬間で叫んでいる。{ 私}が殺した時の、断末魔の叫びだって聞こえる。


私は今更、あの子に向き合う勇気がないのだ。
私が殺した、私が厭うた、生きていくために切り捨てたあの子を、あの子に報いる術が私にはない。今の私を、私が幸せであるために生きることしかできない。
けれどそれは{ 私}であって、あの子ではない。外側からそうとは見えなくても、あの子の人生ではない。

私はあの子を殺してまで守りたかったものを、叶えたかったことを遂げられなかった。無駄だった。あの子は無駄死にだった。

だから最早私は、あの子に、彼女の人生に報いる術を持たない。犠牲となり、私が殺した彼女。私は彼女に何もしてあげられない。

私が自分と空虚の狭間から帰ってこられないように、あの子もこの体の内側から出てこれない。だって彼女の叫びを受け止めてくれる人は、本当に、この世のどこにもいないのだから。

この箱を開けたら最後、私のーーおそらく{ 私}は壊れる、壊れて形を保てなくなる。
私はこの後に及んで、あれだけ何度も殺しておきながら自分だけは、結局最初からずっとこのからだの命が惜しいのだ。